情報処理学会・第97回コンピュータセキュリティ研究会(CSEC97)にて、「トラベルルール(FATF勧告16)の現状・課題・考察ー暗号資産業界の健全な発展のためにー」の発表を実施
2022年5月20日 / お知らせ
本発表の内容は以下の通りです。
(1)暗号資産の不正・不法な利用の急増
違法なビットコインの資産移転総額は$1.4B~$113Bと推定。
暗号資産の違法な利用の急増は犯罪・悪意の急増・氾濫を招く原因であり、大きな社会課題
(2)2019年のFATF勧告16「トラベルルール」とその課題
FATFはマネーロンダリングやテロ資金調達等の監視を行うOECD下の金融活動作業部会
トラベルルールでは、暗号資産の違法な移転を監視できるよう、暗号資産の提供者と受取者に関する名前・住所・識別番号等の確認・保存を、VASP(暗号資産関連事業者)に対し要請
トラベルルールの主な課題は次の2点
①利用者の個人情報のVASP間での交換(個人情報拡散の問題)
②VASP経由の取引のみを対象(監視対象が限定的)
(3)暗号資産業界のトラベルルールへの対応
暗号資産業界のトラベルルール対応状況を整理・報告
主要なグループOpenVASPとTRISAの対応方式を比較
(4)FATFによるトラベルルール改定とその課題
VASP利用者とVASPを使用しない利用者間での資産移転の場合でも、VASP利用者が使用するVASPがVASPを使用しない利用者の個人情報の確認・保存を要請
改定されたトラベルルールにおいても、VASPを使用しない利用者間の資産移転は、依然として監視の対象外
(5)2021年版トラベルルールへの対応
暗号資産業界の対応は未だこれからの状況
(6)安心・安全で公平・公正な暗号資産移転の仕組み実現上の課題
筆者らが期待する安心・安全で公平・公正な暗号資産移転の観点から、次の四つの課題について考察
①利用者の特定・追跡の仕組み上の課題
②利用者の匿名性確保上の課題
③個人情報の海外移転上の課題
④暗号資産システム側の対応の課題